2010年2月28日日曜日

奥秩父散歩

一週間ほど前になるのですが、山梨側から奥秩父を歩いてきました。
逗子発の始発で横浜、東神奈川、八王子、高尾で乗り継ぎ韮崎へ。結構遠いようですが8時半過ぎには韮崎に到着していました。駅前の交番に登山届けを提出し、改札隣のパン屋さんで菓子パンを3つほど購入したりとぶらぶら時間をつぶし、9:20発のバスに乗り込み一路、増富温泉郷へ向かいます。
10時半過ぎには終点の増富温泉郷に到着しますが、前回お正月に来た時とは違い、温泉郷から瑞牆・金峰山の登山口となる瑞牆山荘までのバスはこの時期は運行しておらず、沢沿いの綺麗に舗装された林道を7キロほど歩かなくてはなりません。
たいした距離ではないのですが、路面は完全に凍結し、そして延々と緩やかな上り坂。17~18キロのザックを背負っていることもあり、転ばないように気をつけながらひたすら登山口を目指します。靴を新調してまだまもなく、もちろん一週間程度の街中での足慣らしでは、まだまだ僕の足も靴もお互いに猫をかぶって牽制中。金山高原を過ぎる頃には踵に靴擦れが出来てしまった様子でした。もっとも、靴の形は入念にチェックして靴を選んだので、靴擦れといっても重心移動をすこし控えめにするだけで痛みを最小限に抑えることが出来たのですが。

初日の予定は大日小屋。ペースがあがらなければ富士見平でも良いかな、と考えていたのですが、無事に午後3時前に大日小屋に到着。幕営の準備をしつつ4時には気象情報をメモ。
水場は枯れていたので雪を溶かして水を作ったり食事を作ったり。食事を終える頃にはすっかり暗くなり、マットに寝転びながら天気図を作成。結構やることがあるんですね。
7時頃に一度寝袋にもぐりこみましたが10時前に寒さで目が覚めてしまいました。気温は-12度程。体温を上げるためにもう一度食事の準備をしながら外を覗くと物凄い星空です。視力が悪く、街中だと殆ど星が見えない僕ですが、それでも山の中では素晴らしい夜空を楽しむことが出来るのです。
鼻水を垂らしつつカレーパスタをほお張りながらしばし星空を堪能し、再び寝袋にもぐりこみ、こんどは深い眠りに落ちました。

朝4時半に目覚ましで目を覚まし、外を見るとまだ満天の星空。文句なしの快晴です。
すぐに準備に取り掛かります。ドライフルーツと甘い紅茶で朝食を終えると、行動用の紅茶を作りながら、昨日出来てしまった靴擦れの処置をします。左右の踵に直径2cm、特に右足は水泡状になっているので注意が必要な状態でした。エラスティック・テープに折り重ねたちり紙を貼り付け踵に巻きつけます。靴を履き、アイゼンを装着して様子を見たところ、足首を屈曲させた状態で体重をかけなければ痛みは出ません。痛みが出る可能性があるのは登り斜面のみ。これなら丁寧に歩けば対応できそうです。
今日はテント、寝袋など幕営装備を大日小屋にデポして金峰山の頂上を目指します。登頂後はデポした荷物をピックアップしたのち一気に富士見平まで降りてしまう予定です。夏山の標準コースタイムだと6時間も掛からない行程ですが、事前の情報では積雪は40~120cm。6時には行動を開始します。
7時に大日岩を通過し、太陽の光が差し込む前の幻想的なアイス・ブルーの森の中を深い積雪を踏みしめひたすら稜線を目指します。
砂払いの頭には8:30頃到着。いよいよここからが森林限界上の展望のある稜線歩きです。
千代の吹き上げと呼ばれる右手の急峻な岩肌も雪で凍てつき、その厳しい自然のありようは僕の貧弱な語彙ではとても表現することが出来ません。
幸運なことに殆ど風も吹いておらず、そして周りには雲もガスもなく最高の展望です。南アルプスの山々を右手に見ながら、一歩々々を確かめながら頂に向かって歩を進めてゆきます。
ほんの2600m程の山ですが、10:00時にその頂上に来る頃には空はすっかり蒼くなっていました。
何時までも景色を楽しみたい、何時までもこの場所に居る自分の気持ちの高揚をかみ締めたい、と言う気分もありましたが、本来ここは僕が生存できる場所ではありません。はい、ここは僕にとってはもはや宇宙です。
カチカチに凍った、韮崎の駅前で買った菓子パンを口の中でテルモスの紅茶で溶かしながら飲み込むと、自分の感情を押し殺しつつ10:30に下山を開始します。この時ばかりは普段は数ミリの僕の後ろ髪が数cmほどにも伸びるとか、伸びないとか…。
13:00に大日小屋に到着すると30分で荷物をまとめて富士見平を目指してさらに1時間ほど下山を続けます。
14:30、無事に富士見平に到着。富士見平には豊かな水場があり、ここまで来ると水や燃料の配分を考えなくても良いというのもあり、ちょっとした安堵感が沸き起こります。
水を汲みに行ったり、お湯を沸かしながらぼんやりしていると、あっという間に日没です。山の中ではどうしてこんなに時間がたつのが早いのでしょうか…。
はっ!ひょっとしてこれがウラシマ効果!?