2009年7月11日土曜日

Pedra da Gávea

リオ・デ・ジャネイロのバッハ・エリアにペドラ・ダ・ガヴェアと呼ばれる山があります。

この山はリオの柔術家にとってはちょっとした聖地でありまして、なんでもグレイシー・トレーニングだかのビデオにはこの山を駆け巡り、よじ登る一族の映像が見られるとかなんとか。
僕も今回、リオに来る前にジョンに「俺が若い頃はゴルド達と一緒にペドラ・ダ・ガヴェアに週に二回、登りに行ったもんだよ。お前もゴルドのアカデミーに行くならペドラ・ダ・ガヴェアに登ることになるだろうな。信じられないようなすばらしい景色の山だぞ。」と言われていたので結構楽しみにしていたのですが、現在のゴルドのアカデミーでは、みんなで一緒に駆け登る、というようなトレーニングは行われていないらしく、有志が各々、頂上までではなく見晴らしの良い中間地点まで、もしくは程よいところまで登っては引き返す、といった感じで行われているようでした。
そこで、同宿のカナダ人、ジェイと一緒に、とりあえず登ってみようか、という話になり先日巡礼に繰り出しました。
山のふもとは鬱蒼としたジャングルのような雰囲気で、一応トレイルがあるために明るいうちであれば道に迷うといったような心配はなさそうな雰囲気です。
オランウータンあたりがかじりついていそうな巨大な果実が巨木に絡み付いていたり、昆虫とも鳥ともちょっと判断しかねるさまざまな鳴き声、羽音に森中が満たされていて、”ブラジル”と言う言葉から僕がすぐに連想するようなマナウス、アマゾン流域のいわゆる熱帯のジャングルとは雰囲気が違うのだろうけど、それでも今まで体験したことのあるいかなる森林とも異なる雰囲気を十分に楽しみながら、ひたすら山道を登って行く訳です。
確かに部分々々、それなりに階段状に土留めがしてあったりもするのですが、基本的にかなり「自己責任でどうぞ」的な道のりになっておりまして、「ああ、日本だったら”危険につき立ち入り禁止”ってなってるな。」なんて思いながら、時折先頭を交代しながら頂を目指してしがみついたりよじ登ったり。
リオに来てからしばらく天気に恵まれず、毎日降雨があったのですが、この3日ほど晴天に恵まれ、おかげで足元は適度に乾燥しているのが救いです。
登り始めて2時間半くらいで木々に覆われた比較的緩やかなセクション(それでも結構ハードでしたが…。)は終わりを告げ、いよいよ”Pedra”に取り付くわけです。
ところが、このペドラ、勾配が半端ではない!
下から見上げると垂直に見え、実際のところは精々60度~80度位なのでしょうが、素人の僕にしてみると「これ、登りはいいけど、降りられなくなるんじゃないの?」と深刻な恐怖を覚えるほど。
前日にペドラ・ダ・ガヴェアの話をしていた地元のブラジル人が「あそこ、上のほうでは結構沢山死んでるから気をつけてね。」と微笑みながらも真剣なまなざしで言っていたのがこの時になって頭の中で何度も反芻されました。
「これはちょっとばかり本気にならないと死んじゃうな。」と覚悟を決め、ジェイと二人で何度もルートを検討し、荷物のハーネスが予想外のところに引っかかったりしないようにお互いにチェック。
20分ほど休息をとって、いよいよペドラに取り付きました。
写真で見ると、岩場を這っている様に見えますが、かなり命懸けです。
風が無いのが幸いで、強風だったらとても怖くて登れません。
"Jay, if I found you falling down, I wouldn't help you, sorry."
"It's all right. Save yourself."
ホールドに溜まった小石や砂を、帰りの為に払い落としながら、慎重に慎重に登って行きます。
フリー・クライミングの経験者なら、きっとなんてことの無い壁なのでしょうが、何せ二人とも唯の素人です。
恐怖と緊張で心をすり減らしながらも壁を登りきって崖沿いの幅40cm程の小道を歩き、とうとう無事に山頂に到着です。
かなたにコルコバードの丘のキリスト像が見えます。
山頂に到着したのが4:40PM頃。
「果たして無事、降りられるのだろうか?」と考えつつ軽く食事をして体力を回復させます。
"Ok, I'm ready to die."
"Is it common way to say in Japanese?"
"I don't know man, it is just how I feel right now."
最大の難所と思われた岩壁も、無事に通過。
暗闇の中の下山は不可能なので、明るいうちにとひたすら山を駆け下ります。
途中で息を呑むような夕日に目を奪われるも、のんびり日没を楽しむ時間的な余裕はありません。
途中でストイックな雰囲気の登山者とすれ違い、会話もそこそこに歩き続けます。
あっという間に暗くなり、木々の向こうにリオの夜景が広がり始めます。
そうです…。
遭難しました。完全に。
この暗さではもはやトレイルをたどることは不可能です。
ジェイと二人でぽつんと体育座りで月明かりを待ちます。
ちなみにブラジルは今、真冬です。
リオは赤道直下ではないので夜の冷え込みはかなりの物です。
「これは結構厳しいことになるかなぁ。」と思いつつ、体温が下がらないようにあらゆる工夫をしながら2時間ほど夜空を眺めていると、運が良いことに山頂付近ですれ違ったドイツ人登山者が、懐中電灯で足元を照らしながら下山してくるではないですか!
後はストイックな彼の気分を害さないように気をつけながら、ジェイと二人で彼に続いて真っ暗な山道を下ること約2時間。
二人とも無事ハウスにたどり着きました。
なんとなく頭の中に「遭難するかも。」と言う考えは最初からあったので、一晩山で過ごすのも悪くないな、とも思っていましたが、無事というのが何よりですね。
真っ暗な山中でちょっと面白いものも見つけることが出来ました。
写真に捕らえることが諸事情から出来なかったので、こんど機会を見つけて写真を撮りに行こうかと思っています。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ぎゃー、大変・・・。ここでもまた、生きててくれてよかったよ・・・。

匿名 さんのコメント...

わぁー、遠目で見えるコルコバードのキリスト像がいいすね!
リオを一望できる絶景じゃないすか!!
ボクもブラジル行ってみたいです!


って、どこかのブラジル観光ブログかと思ってしまったじゃないですか!!
そろそろ本題の練習風景、内容のレポートよろ。

gedo831 さんのコメント...

練習内容のリポートとかはブラジル三日坊主日記の方でやってるんだけど、メールいってないかな?僕の本アドにメールくれればメーリングリストに入れますよ。

匿名 さんのコメント...

スイープで即死って。。。。。
そりゃあ簡単にスイープさせちゃダメですね・・・。